佐伯獣医科病院
トピックス1 ダニ媒介による重症熱性血小板減少症候群について
ダニ媒介による重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について
2009年頃から、中国中央部において原因不明の疾患が集団発生しました。
このことで存在が知られるようになり、2011年に初めて原因ウィルスが特定された、ダニ媒介性の新感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の症例が2013年1月、国内で初めて報告されました。(患者は2012年秋死亡)
厚生労働省は2013年3月4日より、重症熱性血小板減少症候群(病原体がフレボウイルス属SFTSウイルスであるものに限る)を四類感染症の指定、またフレボウイルス属SFTSウイルスを三種病原体等に指定しました。
中国で流行しているウィルスとは遺伝子レベルで若干の違いがあることから、いずれも国内に元々存在していたウィルスに感染していたと考えられています。
厚生労働省が過去(2005〜2012年)にさかのぼって確認した10名と、2013年1〜12月に発症した患者数40名の方が確認されています。患者の地域は九州、四国、中国、近畿地方13県に分布しており、致死率は10〜30%と見られています。
2014年2月報告では、九州から北海道までの26自治体より、複数のマダニからSFTSウィルス遺伝子が検出され、調査していない自治体も含め、広く全国的に分布していると考えられます。マダニと動物のウィルス抗体保有状況は現在も調査続行中です。
SFTSウィルスの媒介をするとされるのはマダニの一種フタトゲチマダニ。
(2014年2月の調査報告では複数のマダニ種が保有していることは判明)
森林、草地、市街地等、国内に広く分布しています。屋内にいるダニと異なり、マダニは比較的大型(3〜4mm)です。草むら薮に入るときは肌の露出を少なくし、活動後ダニに刺されていないか確認しましょう。
動物からの直接感染は報告されていません。また動物が発病するかどうかは分かっていません。飛沫感染、空気感染はありません。但し患者の血液の取り扱いは接触予防策の遵守が重要です。
6日〜2週間の潜伏期間を経て、発熱、食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛、頭痛、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、咳、咽頭痛、リンパ球減少、血小板減少などの症状を発症。死亡率12%程度。
マダニによる咬傷後の原因不明の発熱、消化器症状、血小板減少、白血球減少、AST・ALT・LDHの上昇を認めた場合、本疾患を疑うことが大事です。確定診断には、ウイルス学的検査が必要となります。なお、患者がマダニに咬まれたことに気がついていなかったり、刺し口が見つからなかったりする場合も多くあります。
特効薬、有効な抗ウィルス薬、ワクチンはありません。
イヌ、ネコの飼い主の方へ
上に2013年、初めて国内で報告されたマダニが媒介するウィルス性疾患についてトピックスとして取り上げましたが、動物から感染の報告はありませんし、動物の発症に関しても不明です。またペットに付いていたマダニに触れたからといって感染する事はありません。
ただしマダニに咬まれれば危険性はありますし、マダニは他の感染症のウィルスを持っているケースもありますので、ダニの寄生を避ける事はイヌ、ネコにとっても、飼い主の皆さまにとってもおすすめしたいことですので、以下の事に気をつけましょう。
イヌの場合
- ・春から秋にかけてはダニの活動期です。むやみに山野に入らず、戻ったら体表のチェックをするとよいでしょう。眼、鼻、耳、胸、内股、肛門周辺、肢端(指の間等)被毛の薄い部分を重点的にチェック。
- ・散歩後に目の細かい櫛をかけると効果的。
- ・防除剤の使用が大変効果的です。多くの薬がありますので、動物病院にご相談下さい。
- ・敷物の洗濯交換等、犬舎の整備
- ・ダニの付着を見つけたら、無理に除去すると口の部分が残り、化膿する事があるので動物病院に依頼することをお勧めします。
ネコの場合
- ・ネコは自分でクルーミングするので、ダニの付着の可能性は高くないと言われていますが、外へ出るネコの場合は春から秋のダニの活動期には体表チェックをするとよいしょう。
- ・防除剤が大変効果的です。動物病院にご相談下さい。
- ・ダニの付着を見つけたら、無理に除去すると口の部分が残り、化膿する事があるので動物病院に依頼することをお勧めします。
参考:東獣ジャーナル2013年3月(No554)