佐伯獣医科病院
犬の熱中症
毛に被われた犬は寒さには強いものの暑さは苦手です。
汗腺も肉球にあるだけで、人間のように汗をかいて体温調節することができません。犬の体温調節は舌を出してハァハァとする呼吸(パンティングといいます)に頼るしかなく、人間よりも熱中症にかかりやすいと言われています。
夏本番に向けワンちゃんたちの熱中症への注意をいっそうお願いします。
少々難しい話になりますが医学的に説明しますと、熱中症は身体の体温調節がうまく行かず、熱によって全身のタンパク質が変質し、酵素がうまく働かなくなり、細胞膜の脂質が破壊、全身的な細胞壊死が引き起こされます。
卵をゆでたら白身が固まり2度と生卵には戻らないように、重症になってしまうと後遺症が残るケースもあり、また一旦良くなったように見えても1週間後に再発することもあるので、発病後1〜2週間は油断大敵です。
① 熱中症の初期症状を見逃さず、ただちに体温を下げる
初期症状を見逃さず
- ・あえぐようなハァハァと苦しげな呼吸(パンティング)
- ・多量のよだれ
- ・急激な体温の上昇(40℃以上)
- ・歯茎や目の充血(赤色)
すばやい対応が必要
- ・冷たい大量の水道水で冷やす
- ・タオルで冷水をかけて風を送り気化熱で
- ・冷やしても可
- ・保冷剤や冷水タオルを頭や四肢の付け根にあてる
- ・水を飲ませる(スポーツドリンクを水で2倍に割って飲ませるとよい)
- (注)氷水は皮膚の血管収縮により熱が体内にこもるためダメ!
- (注)アルコールスプレー、アスピリンは副作用の点からダメ!
体温が39.5度まで下がったら、冷やすのをやめ、早めに病院に連れて行きましょう。
更に症状が進んでいる場合
② 命にかかわる状態、体温を下げながら大至急病院へ!
命に関わる状態!
- ・虚脱状態、注意散漫、
- ・呼びかけに反応が鈍い
- ・青白い歯茎
- ・嘔吐、下痢
- ・けいれん
ただちに体温を下げながら大至急病院へ
上記の方法でただちに体温を下げながら
大至急病院へ!
(移送中も冷やしながら)
熱中症の予防
先に述べたように、熱中症は急激に体温が上がり命にかかわる病気です。たとえ命が助かっても後遺症が残るケースもあります。
まずは予防が大切です。
・風通し、日当り、湿度に注意してください。
気温がそれほど高くなくても、呼吸で唾液を蒸散させ体温調節しますので、湿度が高いと熱中症にかかりやすくなります。
外飼いの場合は日陰に移動できるように。室内でも日当りの良すぎる場所はエアコンがあっても危険です。
・いつでも水が飲めるようにしてください。
・夏以外でも天気のよい日は車の中は急激に温度が上がりやすいです。
車内に犬だけを残すことは絶対やめてください。
暑い季節の車の旅行は頻繁に休憩を取り、水分補給と程度な運動をさせる必要があります。
・夏の散歩は日中を避け、早朝や夜に。
アスファルト付近は人間の頭の高さより遥かに高温になるので注意してください。・短頭種(パグ、ブルドッグなど)、北方種(シベリアンハスキーなど)、肥満犬、子犬、老犬、心臓、呼吸器の弱い犬は一層の注意は必要になります。